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原子力発電の安全性

多重防護の安全性

安全確保のしくみ

原子力発電所は、基本的に放射性物質を閉じ込める構造としたうえで、「多重防護」の考え方を採用しています。これは、「異常の発生を防止する」、「異常が発生した場合には早期に検知し、事故に至らないよう異常の拡大を防止する」、「事故が発生した場合にも、この拡大を防止し影響を低減する」という3つのレベルでの対策を講じるものです。

これに加え、より厳しい事故の発生を想定し、シビアアクシデン トの発生防止、発生した場合の進展防止および影響緩和のた めの安全対策の強化に取り組んでいます。また、原子力発電所周辺環境における事故時の放射線影響緩和のための防災対策 の強化にも取り組んでいます。

※原子炉が重大な損傷を受けるような事象
安全確保のしくみ

出典:「原子力・エネルギー」図面集2015

 
 

原子炉の固有の安全性(自己制御性)

国内の商業用原子力発電所に採用されている軽水炉は、出力が上がると自然にブレーキが掛かって出力を自然に下げる性質があります。これを「自己制御性」といい、その自己制御性には、「ボイド効果※1」と「ドップラー効果※2」があります。
原子炉の固有の安全性(自己制御性)

出典:「原子力・エネルギー図面集」2018

※1
:ボイド効果(水の密度が小さくなって中性子のスピードが落ちにくくなる効果)
水には、中性子と衝突してスピードを落とし、核分裂し易くする役割があります(減速材)。
原子炉の出力が上がると、燃料の周りの水温が上がって沸騰し、水の体積が膨張して密度が小さくなります。
水の密度が小さくなると、中性子と水が衝突しにくくなって中性子のスピードも落ちにくくなります。
これにより、ウラン235が核分裂しにくくなって原子炉の出力が自然に下がります。
(参考)
沸騰水型原子炉(BWR)の場合、原子炉圧力容器内の水が沸騰して泡(ボイド)が出来ることによる効果なので「ボイド効果」といいます。加圧水型原子炉(PWR)の場合、通常沸騰はしないので、「減速材の温度効果」、「密度効果」などといいます。
※2
:ドップラー効果(温度上昇によりウラン238が中性子を横取りする割合が増える効果)
ウラン燃料の温度が上がると、燃料中の核分裂しにくいウラン238が中性子を吸収し易くなり、核分裂で出来た中性子がウラン238に横取りされるため、核分裂しやすいウラン235の核分裂反応が減り、原子炉の出力が自然に下がります。
(参考)
ウラン238には、特定の速度の中性子を吸収し易い性質(共鳴吸収)があります。
核分裂により放出された高速の中性子が十分減速された後、ウラン235に吸収されてまた新たな核分裂が発生しますが、その中性子が減速される途中に共鳴吸収の領域があり、燃料の温度が上がるとこの共鳴吸収の有効幅が広くなり、中性子がウラン238に吸収され易くなります。

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